1.市場概況
国内の新設戸建住宅市場は、人口減少といった構造的な要因や、建設費高騰に伴う住宅価格高騰、住宅ローン金利の上昇などの厳しい市場環境から、近年減少傾向で推移している。
そのような市場環境の中、多くの事業者は、戸数拡大を目標とする従来モデルから、単価向上・利益率確保・顧客層の選別を重視する収益性重視型モデルへの転換を進めている。
具体的には、都市部への人口集中と地方圏の人口減少という二極化を背景に、新規供給は都市部の駅近・生活利便性の高いエリアに経営資源を集中する一方、地方圏では、出店抑制・ストック活用(建替・リフォーム・賃貸)へのシフトが進行している。
2.注目トピック
新築住宅以外の事業領域が拡大
ハウスメーカー各社は新築住宅市場の縮小を背景に、住宅ストックを活用したストック型ビジネス(リフォーム・既存住宅活用)の強化を重要な成長戦略と位置づけている。
具体的には、リフォーム事業や、不動産事業(賃貸・仲介・再販)、まちづくり事業など、新築住宅供給から総合的な住環境ビジネスへの転換を進めている。
その他、家電事業者や家具事業者との連携、ホテル・ストレージなど周辺領域への多角化を通じて、住宅取得後も含めた継続収益型のビジネスモデルの構築を進めている。
3.将来展望
2040年度の新設戸建住宅着工戸数は22万6,100戸(2024年度比34.6%減)と予測する。
今後、人口や世帯数は減少傾向で推移すると予測する。
また、建設費や住宅ローン金利の上昇など、新設戸建住宅市場には向かい風となる要因があることから、新設戸建住宅市場は減少傾向で推移すると予測する。
国内の住宅市場は、大きな転換点を迎えています。人口減少に伴う住宅需要の縮小に加え、住宅価格の上昇やライフスタイル・価値観の変化などを背景に、新設住宅着工戸数は想定以上のペースで減少しています。
2040年までの住宅市場を予測するとともに、2050年に国が掲げる「住宅ストック平均での水準の省エネ性能確保」の実現に向け、必要となる住宅ストックの姿を試算しました。その結果から見えてきたのは、新築住宅を供給する時代から、既存住宅を活かしながら住宅ストック全体の価値を高める時代への転換です。
昨年度公表した予測では、2025年度の新設住宅着工戸数を85.3万戸としていました。しかし実績は71.1万戸となり、予測を14万戸以上も下回る結果となりました。
その背景には、2025年4月の省エネ基準適合義務化を控えた想定以上の駆け込み需要と、その反動減があります。制度改正前の2025年3月には着工が大きく増加した一方、4月以降は反動による急減が発生し、市場全体を押し下げました。
もっとも、住宅市場の低迷は制度改正だけでは説明できません。より大きな要因となっているのが、住宅価格と所得の乖離です。建築費や地価の上昇に加え、住宅ローン金利も上昇局面に入り、住宅取得の負担はここ数年で大きく増しています。今回の予測と実績の乖離について分析した結果でも、その約半分は住宅価格と所得の乖離による影響と推計されました。
住宅需要そのものにも構造的な変化が生じています。結婚や出産といった住宅取得のきっかけとなるライフイベントは減少傾向が続き、「持家に住みたい」「新築を購入したい」と考える人の割合も長期的に低下しています。住み替えのしやすさを重視し、賃貸住宅や中古住宅を選択する人が増えるなど、住まいに対する価値観も変わり始めています。
供給側でも、人手不足や労働時間規制による施工能力の低下、部材の調達難や建築費高騰による開発見送りなどが重なり、新規着工を押し下げています。これら需給双方の要因が複合的に作用しているため、現在の住宅市場の冷え込みは一過性ではなく構造的な問題であり、その解消には一定の時間を要すると考えています。
この変化は2040年の住宅市場だけでなく、2050年に向けた住宅政策や脱炭素への取り組みにも大きな影響を及ぼします。
持家・分譲住宅・貸家のいずれも減少します。なかでも持家の減少幅が大きく、住宅価格の上昇を背景に、注文住宅から分譲住宅へ需要が移る流れも続くと考えられます。
一方、リフォーム市場は既存住宅の老朽化を背景に緩やかな成長を続け、2040年度には約9.2兆円規模になる見通しです。新築住宅の供給が減る中、既存住宅を維持・更新しながら長く使う重要性は一段と高まります。
今回の予測が示しているのは、住宅需要がなくなるのではなく、その向かう先が変わるということです。住宅市場は、新築住宅を供給するフロー中心から、既存住宅というストックを活用する市場へと重心を移しつつあります。
この変化は住宅産業のビジネスモデルだけでなく、脱炭素へのアプローチも変えます。国は2050年までに「住宅ストック平均でZEH水準の省エネ性能を確保する」という目標を掲げています。しかし、新築住宅の割合が相対的に小さくなる中では、新築だけの省エネ化で目標を達成することはできません。
重要になるのは、既存住宅を含めた住宅ストック全体の性能向上です。そのためには、新築住宅の供給だけでなく、既存住宅の省エネ改修や老朽化住宅の計画的な除却を一体的に進めていくことが欠かせません。
高性能な新築住宅を供給するだけでは、2050年の目標は達成できません。既存住宅の改修と老朽化住宅の除却を進め、住宅ストック全体の質を高めていくことが不可欠です。
もちろん、新築住宅の省エネ性能向上は引き続き重要です。しかし、新設住宅着工戸数が減少していく中では、それだけで住宅ストック全体の性能を引き上げることはできません。「建てる」に加え、「直す」「減らす」という視点を住宅市場全体へ広げることが求められます。
もっとも、この取り組みは容易ではありません。試算では、省エネ改修は年間平均約120万件が必要になりますが、これは現在の主要な補助事業による支援件数を上回ります。そのため、政府による補助金だけでなく、民間企業による住宅診断や住宅価値の適切な評価、金融機関による融資、地域単位でのエリアマネジメントなど、市場が自律的に機能する仕組みづくりも重要になります。
また、老朽化住宅については、災害リスクも踏まえた計画的な除却に加え、解体資材を資源として有効活用する仕組みづくりも求められます。
今回の試算から見えてきたのは、新設住宅着工戸数が減少する時代には、新築住宅の性能向上だけでは住宅ストック全体の脱炭素化は実現できないということです。これからは、新築・改修・除却を一体で進めながら、住宅ストック全体の価値を高めていく視点が欠かせません。
2040年に向けて住宅市場の重心は、新築住宅を供給するフロー市場から、既存住宅を活かすストック市場へと移りつつあります。住宅市場は、「どれだけ建てるか」を競う時代から、「どれだけ良質な住宅ストックを次世代へ引き継ぐか」を問う時代へ――。今回の住宅市場予測は、その転換がすでに始まっていることを示しています。
特に以下のような要素は、住宅業界が厳しい現状に大きく影響しています。
- ・原価率の高騰
- ・日本の人口減少
- ・住宅建築需要の地域格差














